コラム

CADのスキルアップ

派遣先の企業や業種により、使われているCADの種類は様々ですが、2次元CADであれ3次元CADであれ、使用する際の基本的な考え方は同じです。今回は3次元CADを中心に、操作の概要と必要なスキルアップについて説明していきましょう。
また、実際の仕事ではCADの操作スキルに加えて、関連する周辺の知識なども要求されることが多くありますので、今回と次回でそれらについても触れていきます。

CADのスキルアップとは?

ホームセンターなどでよく見かける、棚板を支える金具[図-1、2]のようなものを想像して下さい。簡単な部品ですが、2次元CADの作図と3次元CADのモデリングでは、必要な操作や考え方が異なります。

[図-1]棚板を支える金具

[図-2]金具の形状

【2次元CADの作図】

2次元CADは、鉛筆と定規・コンパスをコンピュータに置き換えたようなものなので、基本的には直線と円弧の描き方さえ覚えれば、作図できます。最終的には、JISの製図ルールに従って、形状や寸法を配置し[図-3]のような図面を完成させます。

CADの種類によって使用するコマンドの名称や若干の操作手順は異なりますが、作図自体はそれほど難しくは無いでしょう。むしろ、派遣先の企業によって異なる独自の製図ルールを覚えるほうが大変かもしれません。ただ、独自とはいえ、JISの製図ルールをアレンジしている場合がほとんどですから、まずはJISの内容を理解しておけば大丈夫です。

[図-3]金具の製図

【3次元CADのモデリング】

同じ金具を3次元CADでモデリングしてみましょう。形を決めていく過程(プロセス)を3次元CADの中で再現するように考えれば簡単です。

最初に、長方形の2次元図形を作図(スケッチ)し、それを押し出して突起[図-4]を作成します。このままでも棚板を支えることはできますが、重く(=コストが高く)なるので、薄板化[図-5]することになります。これが基本形状となります。

[図-4]基本形状

[図-5]薄板化

その後、設計的に要求される細かな形状を追加していきます。例えば、このままでは棚の荷重で変形しそうなので、角部を丸めたり[図-6]、補強形状を追加したり[図-7]という手順で、完成形状[図-8]までモデリングします。

本コラムでは、3次元CADの具体的な操作コマンドを説明するのが主眼ではありませんが、CADの操作スキルという面で見れば、おおよその感覚を理解しておくことは大切です。

[図-6]角部の丸め

[図-7]補強形状

[図-8]完成形状

3次元CADを大別すると、上記のような履歴をデータとして記録できる「ヒストリー系」と呼ばれるタイプと、最終形状だけを記録する「ノンヒストリー系」と呼ばれるタイプがあります。どちらのタイプでも、モデリングの手順や考え方は同じですし、3次元CADの種類が異なっても、それらは変わりません。

【企業と主な3次元CAD】

企業では業務に応じて、種々の3次元CADが使用されています。業界によって多少の偏りはありますが、派遣先の企業で使用されている3次元CADを操作できれば、即戦力として期待されるでしょう。

ただ、先に説明したように、異なる種類でも考え方は同じです。まずは種類にこだわらず、学ぶ機会が得られたものを習得しておくことを心がけましょう。下記の例は全てヒストリー系の3次元CADですが、どれかを操作できればスキルとして認められますし、他のCADを習得する際も簡単です。

  • CATIA…自動車・航空機業界で多く使用されています。建設機械や家電業界でも使用例があります。
  • Creo Parametric…家電・自動車・一般機械業界など、特にジャンルを問わず使用されています。
  • NX…自動車・家電業界などで多く使用されています。
  • Solid Edge…一般機械・家電業界など、特にジャンルを問わず使用されています。
  • SOLIDWORKS…家電・一般機械など、特にジャンルを問わず使用されています。中小企業でも多く使用されています。

オペレータやモデラの仕事

設計者の指示に従って3次元CADの操作を行い、必要なデータを作成するのがオペレータやモデラの仕事となります。一般的なオペレーションだけでなく、複雑な形状や曲面形状に特化して正確なデータを作成できる人は「モデラ(モデラー)」と呼ばれたりします。

2次元CADと比べて、3次元CADを使える人は不足気味なので、オペレーションやモデリングができる専任者の需要は多くあるようです。

【基本操作の習得】

全く初めての場合、個人で3次元CADを持っているわけでもないので、自習だけで操作を習得することは困難です。一般的には、派遣会社の教育やCADスクールなどを利用することになります。各地にあるポリテクセンターでも、各種3次元CADの操作講座が開催されていますので、それらを受講するのも良いでしょう。

ただし、上記の教育で教えてもらえるのは「操作コマンド」だけのことがほとんどです。「何ができる」のかを知ることは出来ますが、「どのように活用すればよいか」という実践的な内容は不足しているのが実情です。そのため、CAD(2次元、3次元)は単に作図したりモデリングしたりするだけではなく、設計検証のツールとして活用されるものである、という認識を持ちながら教育を受けましょう。

下記の「モデリング3ヶ条」や「定石コマンド」にポイントを記載しておきます。

モデリング3ヶ条とは…設計検証を考慮したモデリングメソッドをまとめたもの

  1. 設計で重要な部分から作る
    モデリングは、物の形を決めていく過程(プロセス)を3次元CADの中で再現してゆきます。言い換えると、設計の手順に従って、重要な部分から作成するということです。設計の経験が無い(少ない)場合は、大きな形状(=重要な形状)から作る、と覚えておけば良いでしょう。
  2. フィーチャを設計機能に対応させる
    いきなり最終形状を作ろうとするのではなく、先の「棚を支える金具」のように、単純な形状要素(フィーチャ)の組み合わせでモデリングすると言う意味です。それぞれのフィーチャは個々の設計機能(例えば、基本形状や補強形状)に対応させます。
  3. 設計基準を明確にする
    データの作成基準(設計を開始する位置)は設計者から指示をもらうか、形を決めていく際に重要な位置を選びましょう。部品の端面などは形が出来てから決まる位置なので、適切な設計基準ではない場合も多いです。

定石コマンドとは…よく使用する重要なコマンドをまとめたもの(3次元CADによってコメンドの名称は異なります)

  1. 体積を付加するコマンド
    パッド(CATIA)、押し出し ソリッド(Creo Parametiric)、突き出し(Solid Edge)、押し出し ボス/ベース(SOLIDWORKS)
  2. 体積を除去するコマンド
    ポケット(CATIA)、押し出し 材料を除去(Creo Parametiric)、切り抜き(Solid Edge)、押し出し カット(SOLIDWORKS)
  3. 薄板化コマンド
    シェル(CATIA、Creo Parametiric 、SOLIDWORKS)、側壁(Solid Edge)
  4. 編集コマンド
    ラウンド・面取り(Creo Parametiric)、丸みづけ・面取り(Solid Edge)、フィレット・面取り(SOLIDWORKS)
    ドラフト(CATIA、Creo Parametiric)、勾配(Solid Edge)、抜き勾配(SOLIDWORKS)

【前提となる知識】

操作はできても、やはり前提となる知識は必要です。例えば、棚板を支える金具[図-1、2]に関しては、下記のような知識を身に着けるように心がけましょう。

  • 図面関する知識…細かな製図ルールはJISに規定されています。
  • 金属材料に関する知識…棚板を支える金具には金属の薄板(板金)が使用されます。図面に記載する材料記号や特性もJISに規定されています。
  • プレス加工に関する知識…棚板を支える金具は「プレス加工」で製造されています。

JIS(日本工業規格)については、内容を抜粋した「設計製図便覧」が数社から出版されていますので、購入しておくと便利です。仕事の中で不明点があれば、まずは手元の設計製図便覧で調べてみるという使い方がおすすめです。

アシスタントやエンジニアの仕事

3次元CADのオペレータだけではなく、設計者のアシスタントなど、より設計に近い仕事を行う場合には、必要とされる知識も増えてきます。

単純なコップ[図-9]をモデリングする例を考えてみましょう。図面には全ての寸法が記載されているわけではありませんが、内容量は 180cc と指定されています。

[図-9]コップのモデリング

設計手順を簡単に記載します。

  1. 設計基準はコップの口とします。人が水を飲むことを想定すると、コップの口の大きさや形状が重要となるからです。
  2. 内容量(180cc)が指定されているので、コップの中に入る(例えば)水から考え始めます。まずは、円柱などの簡単な形状で、中に入る水の体積からコップの基本寸法を想定します。
  3. 想定した体積となるように、円柱をモデリングします。3次元CADの評価機能を利用して、体積をチェックします。[図-10]
  4. コップを射出成形品で製造する場合、抜き勾配が必要です。ドラフトコマンドを使用して抜き勾配を付加します。その状態で、内容量をチェックします。[図-11]
  5. 内容量を保つように、薄板化します。薄板の厚みは、水を包むように円柱(内容量)の外側に設定します。[図-12]
  6. 取っ手を作成します。[図-13]

[図-10]内容量(体積)概算

[図-11]内容量(体積)概算

[図-12]コップ本体

[図-13]取っ手

3次元CADの操作自体は、定石コマンド(突起、カット、シェル等)さえ覚えてしまえば、それほど難しくありません。より重要なのはモデリングに付随する知識です。CADの操作とともに、棚板を支える金具[図-1、2]やコップ[図-9]に使われる材料や製造方法に関する知識も身に付けておきたいところです。

誰でも最初は、図面に従ってモデリングする作業(2次元CADで言えばトレース業務)からスタートします。経験を積み重ね、色々な知識が増えてくれば、コップの例のように「寸法は任せるから、内容量180ccのコップを作ってね」といった仕事を任せられるでしょう。それらをこなしながら、どんな複雑形状や曲面形状にも対応できるように腕を磨くことも可能です。あるいは、設計アシスタントの仕事をしながら設計者を目指しても良いでしょう。

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